僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
 熱でどうかしてる時に思い浮かべた馬鹿げた妄想を舌打ちとともに全否定して、僕は葵咲(きさき)ちゃんの待つ寝室へ戻った。

 葵咲ちゃんは僕がそばを離れないと約束したからか、安心した様子でまぶたを閉じていて。
 規則正しく上下する布団の胸元を見て、眠ってしまったのかな?と思う。

 着替えは……葵咲ちゃんが目を覚ましてからにしよう。
 いま葵咲ちゃんが着ている服はシワになってしまうかもしれないけれど、そんなのは後でどうとでもなる。

 それよりも葵咲ちゃんの身体を休ませてあげる方が大事だ。

 小さく寝息をたてる葵咲ちゃんを見下ろすと、彼女の額は僕がさっきかき分けたままに前髪が左右に軽く分かれていて。
 しっとりと汗ばんだおでこに、後れ毛が張り付いていた。

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