僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
 そもそも男自体の成り手が少ない職業だ。
 僕が真咲と仲良くなれたきっかけも、元々は図書館学の履修が縁だったし、最後まで一緒にやり遂げて、二人で司書の資格を手にして卒業するものだと信じていたんだけど。

 歯切れの悪い物言いに、僕は真咲をじっと見つめた。

「真咲さ、図書館学の講義、すごく真面目に受けてたよね? ――なのになんで最後まで履修しなかったの?とか聞いても……平気? ひょっとして婿養子に入ったのと関係あったり、する? もちろん言いたくなければ今の質問、無視してくれて構わないんだけど」

 さっき一度、聞くのを躊躇(ためら)った言葉を、意を決して投げかけたら、真咲は一瞬驚いたような顔をした。それから淡く微笑んで、
「そこは君には話したくないな。……ただまぁ、婿養子については、単にうちには継ぐ人がいて、向こうにはいなかったからってだけの話だよ」

 そう言って、ビールを一口飲んだ。

 真咲は、何故図書館学をやめたのか、については()()()教えたくないらしい。
 僕が真咲にとっては、“持ちすぎている”人間に思えているからかな?とか思ってしまった。

 まぁ、話したくないなら仕方ないや、と僕は早々に気持ちを切り替える。

 それよりも、だ。
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