僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
***

「あの、そういえば理人(りひと)……」

 湯船の中。
 ふと何かを思い出したように僕を見上げてくるアーモンドアイの瞳が可愛くて。
 既に数回彼女の――というよりゴムの中で果てた僕だったけれど、そんな風に上目遣いで見上げられるとまた()()()なる。

「……今日は誰かからチョコ」

 そんな僕の欲望なんて知らぬげに、葵咲ちゃんがそう言って、ソワソワと僕を見つめてくる。
 僕は葵咲ちゃんの言葉にドキッとさせられて、あのチョコのことを言うべきか否か逡巡した。


「バイトの子達から、みんなで食べる用の大きなのをひとつだけ」

 実のところ、同僚や学生からいくつか差し出されたけれど、受け取ったのは結局それだけだ。

 言葉を選びながらそう答えたら、「何か悔しいな」って。どう言うこと?


「理人がモテないわけないの、私知ってる」

 ポツンとそうつぶやいて、まるでその先を言うのが恥ずかしいみたいに、葵咲ちゃんがお湯に口元を半分沈み込ませてと、ブクブクと泡を吐き出す。

「たくさん貰ってこない理人に、何で?って思うのと同じぐらい……よかったって思ってる」

 ややして観念したようにそうこぼした葵咲ちゃんが愛しすぎて。
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