僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
「ほら、修太郎(しゅうたろう)さんが駄々をこねるせいで、ききちゃんに変な気を遣わせてしまったじゃないですか」

 背後の塚田さんを、ひおちゃんがキッと睨みつけて、彼が慌てたように「すみません」と謝罪をなさった。
 私は慌てて「あ、だ、大丈夫ですっ」と返すので精一杯で。

 確か私、二人はかなり歳の離れた夫婦だと聞いていた。
 でも、ひおちゃん、歳の差なんて物ともせず、結構きっちり塚田さんの手綱(たづな)を握っていたり……する?

 私、理人(りひと)に対してここまでちゃんと色々言えない気がする。
 そう思ったら、隣に立つひおちゃんが物凄く(まぶ)しく見えた。

(これが入籍を済ませた奥さんの強み、だったりするのかなぁ)

 ふとそんな風に考えて、私は小首を傾げた。


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