僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
「ペンギン?」

 ぬいぐるみ越しでよく見えないけれど、理人がキョトンとした声を出したのが分かった。

「今日ね、通りに新しくオープンした雑貨屋さんで一目惚れして買ったの。何だかとってもカッコイイお顔してるでしょ? この子をギュッてしてたら、抱き心地がよくて落ち着くの。――ね、理人。これ、ベッドに置いてもいい?」

 腕に抱きしめたペンギンをちょっとだけズラして、その陰からひょこっと顔を覗けて理人の様子を(うかが)う葵咲に、「……一目惚れ?」とこぼした理人の声のトーンが、わずかに低くなる。

 この声は、理人が不機嫌になった時のものだ。

 長い付き合いで、それは即座に分かった葵咲だったけれど、その変化の理由が分からなくて、「え?」と思ったのと同時――。
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