僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
 考えてみれば、理人からやり繰りを任されている家計の9割以上は、理人の稼ぎで(まかな)われているのだ。
 葵咲も、バイトをして補填(ほてん)したいと申し出たことがあるのだけれど、「キミは家事の大半をしてくれているのだから必要ない」「学生の本分は学業だろ?」などと(いさ)められ、言いくるめられてしまった。

 葵咲の実家からの仕送りだって、なるべく手を付けずにそのまま置いておくように言われているし、「何故?」と問い掛けたら「キミの前では甲斐性(かいしょう)のある男でいたいからだよ」と左手の薬指に口付けられて。


 きっと、理人なりに結婚後のあれこれをシミュレーションしたいんだろうなと思った葵咲は、畳み掛けるように「葵咲(きさき)が自立するまでは僕に養わせて欲しい」と切なげに()われるに至って、すっかりほだされてしまったのだ。


 でも――。

(私、きっとそんな理人の優しさに寄りかかりすぎてしまったんだわ)

 そう思い至った葵咲(きさき)は、

「何の相談もなくごめんなさい」

 素直にそう謝った。
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