僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
葵咲(きさき)ちゃんはちょっぴり冷え性だから、末端部分が()()()()()いつもひんやりしてるよね。昨日も僕が最初に耳に触れた時、キミの耳たぶはとても冷たかった……』

 フッと電話口から理人の吐息が聴こえてきて、葵咲は耳に息を吹きかけられた錯覚に陥る。

「んっ」

 思わず小さく声を上げてしまって、そのことににわかに恥ずかしくなった。



『今はどう? 耳、冷たい? それとも――』

 強請(ねだ)るように現状を聞かれて、「知らない!」と跳ね除けようとしたら『教えろよ、葵咲。別に恥ずかしいことじゃないだろ?』と、()()()調()で畳み掛けられて。

 確かに耳が冷えているかどうかを教えるぐらい、どうってことないはずなのだ。
 それを変に意識している自分の方が(みだ)らなんじゃないかと思ってしまった。

 理人の問いに答えるため、指先で耳に触れてみると、燃えるように熱を持っているのが分かった。

「ものすごく……熱くなってる」

 そのことに戸惑いつつも、ありのままを淡々と伝えたら『熱くなってるのは耳たぶだけ?』とさらに問われて。

 葵咲は理人が何を言いたいのか(はか)りかねて止まってしまう。
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