僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
キミしか見えない僕なのに
 結局あのあと、僕は殆ど修太郎(しゅうたろう)氏の言葉が入ってこなくなってしまった。

 ああ、葵咲(きさき)ちゃんが不機嫌な理由はきっとコレだ、って思ったんだ。
 
 僕と修太郎氏の違い。

 修太郎氏と話せば話すほど、僕と彼はとても似た者同士だと思ってしまって……そう認識してしまったからこそ、最後に言われた言葉は痛烈な一撃になった。

 今日の宴席で、葵咲ちゃんとかぐや姫が楽しそうに顔を寄せ合って話しているのを見て、女子会って結構ディープなことを話すんだろうなって容易に察しがついた。

 きっと2人とも初心(うぶ)晩生(おくて)なタイプだから、滅多なことでは他者と猥談(わいだん)的なことはしなくて。

 聞けないからこそ、久々に再会した時、余計にお互いのことを知りたくなったんじゃないかな。

 他の人には聞けないようなことも、聞ける相手。

 ふたりは、そんな雰囲気の友人同士に見えたから。

 実際、彼女たちは昨夜かぐや姫の自宅で、2人きりの女子会を開いたみたいだ。
 修太郎氏が奥さんからお酒を飲んでもいいかと打診をされたそうなので、これは確実なはず。

 気の合う女の子がお酒を飲んでガールズトーク。盛り上がれば初体験の話なんかが出ても不思議じゃないよね。

 僕が昨夜電話で話したときはいつも通りで、今日会ったらぎこちなくなってしまっていた葵咲ちゃん。

 くだんの女子会で何かあったとしか思えないじゃないか。

 修太郎氏の言い方だと、塚田夫妻は初めて同士だったはずだ。

 対して僕と葵咲ちゃんは。

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