僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
 それらがなくならないようにベッドの宮棚に載せると、葵咲ちゃんはお風呂上りによく見る下ろし髪になった。

 ギュッと束ねていた跡が全然ついていない艶やかな黒髪に、そっと指を絡めて彼女の耳にかける。
 愛らしい耳がほんのりと朱くに染まっていて、それがすごく可愛くて。

「そんなに力を入れて吸わなくても大丈夫だよ?」

 言うけれど、葵咲ちゃんにはキスマークをつけるコツがよく分からないみたいで。

 僕を申し訳なさそうに見上げると、「頑張って吸い付いてみたけど全然(あと)、残せない」と悲しそうに言うの、本当に可愛いんだ。

理人(りひと)は何でそんなに上手にできるの?」

 ふっと自分の胸元に視線を落とした葵咲ちゃんが、そこに残された花弁に触れながらつぶやく。

 僕がつけた(あざ)を葵咲ちゃんの綺麗な指先がなぞる様は何とも艶めいて見えて――。

 僕は思わず唾を飲み込んだ。

 そこで釣られるように自分の胸元に視線を落とすと、葵咲ちゃんが離れたあとには本当に申し訳程度に薄っすらと鬱血したあとが残っていて。

 あんなに頑張っていたのに“コレ”と思うと、余計に愛しさが込み上げた。

「考えたこと、なかったな――」

 言いながら葵咲ちゃんを抱き寄せて、さり気なくブラのホックを外す。

 そうして彼女の肩から肩紐と一緒にワンピースの袖を抜き取ると、「ヤダっ」と葵咲ちゃんが僕にギュッと身体を寄せるようにして胸を隠そうとしてきた。

 でもごめん、それ逆効果だ。

 葵咲ちゃんの柔らかくて弾力のある乳房が、僕の胸に押し当てられているんだもの。

 お互い裸で……素肌同士で触れ合っているのだから、嫌でも相手の温もりを意識してしまうじゃないか。
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