僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
 僕は葵咲(きさき)ちゃんのカーディガンをそっと二の腕から引き抜くと、ワンピースの前開きボタンに手を伸ばす。

 ひとつひとつボタンを外していくごとに、葵咲ちゃんの白く滑らかな肌が少しずつ(あら)わになっていく。

 そのことに、僕はこの上なくそそられた。

 お酒でいつもよりほんのり赤みがさして見えるたわわなふくらみの始まりに、僕は吸い寄せられるように顔を寄せる。

 葵咲ちゃんの肌に近づくと、ほのかに甘い体臭が鼻先にふわりと漂ってきて、彼女の皮膚の上から体温と一緒にその色香が立ち上ってくる様で――。

 下着(ブラ)のレースが葵咲ちゃんの豊かな乳房を覆い隠している様が、何度見てもとてもエロティックで(あお)られる。

「葵咲、すごく綺麗……」

 離れていたのはたった一晩。
 でも、僕にとっては永遠みたいに感じられる長い一夜だった。

 今日ここに来ることを許されて本当に良かった、と思う。でないと再会したとき、僕は葵咲ちゃんを壊していたかもしれない。


 どうしようもない独占欲に突き動かされるように、僕は葵咲ちゃんのブラの(きわ)にチュッと吸い付いて、1つ目のキスマークを残した。

 僕の、僕だけの葵咲ちゃん……。

 そういう意味合いを込めた、所有印(しるし)
 

 声を気にしてずっと口に手を当てたままの彼女の手首をそっと取ると、僕はそのまま自らの胸元に触れさせた。

「葵咲、僕がすごくドキドキしてるの、分かるよね?」

 わざと葵咲ちゃんを挑むように見つめながら、彼女の手を僕の肌の上をゆっくりと滑らせるように這わせる。

「ねぇ葵咲、僕にもキミの印、つけて?」

 キミだけの僕だと刻み込んでよ。

「ここに――」

 彼女の小さな手を、葵咲ちゃんにつけたキスマークと同じ辺りで止めると「ね? お願い」と畳み掛けてじっと見つめる。

 葵咲ちゃんが僕の視線に押されるように、ゆっくりと半身を起こして、おずおずと僕の胸元へ唇を寄せる。

 その様を見下ろすだけで、僕はたまらなくゾクゾクするんだ。


 葵咲(きさき)ちゃんが懸命に僕の胸元に唇を寄せて肌に吸い付いている。

 顔を真っ赤にしているのがすごく可愛くて、僕は彼女の、根本が少し乱されたポニーテールを指先で(もてあそ)びながらその様を見る。

「葵咲、ゴム、外すね」

 言って、葵咲ちゃんが返事をするのも待たずにスルリと髪から花柄のシュシュと一緒にその下のゴムを抜き去った。

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