名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 私たち親子の事を身代わりだなんて朝倉先生は思っていない。
 自分の自信の無さから勝手にネガティブ思考に陥って悪い考えに囚われてしまっていた。

「翔也さん。辛いお話をさせてしまいました。ごめんなさい。二人で解決していこうと言ってもらえて嬉しかったです」

「いや、もっと早くこの話をしておけば良かった。すまない」
 朝倉先生は私の頬を手で包み込み、唇に優しいキスを一つ落とした。

 唇が離れた後、私は意を決して口を開いた。
「翔也さん、私もお話しておくことが、あります」
 朝倉先生は頷き、私を見つめた。

「あの、先日、うちに来て頂いた時に会った人が美優の父親で、美優の認知の話が進んでいます」

 ここまで言うと心拍数が上がっているのが自分でもわかる。先日、家の玄関先で朝倉先生と将嗣が会った時の事を思い出す。

「彼と付き合っていた時、彼が既婚者だって知らなかったんです。既婚者である事を知って直ぐに彼と別れました。その後に妊娠に気が付いて、授かった命を消してしまう事をしたくなかったから黙って美優を産んだのです。そうしたら美優の健診で区役所に行った時に偶然会ってしまって……。その後、月齢で付き合っていた時の子供だっていう話になったんです」

「それで、既婚者でありながら今も夏希さんに付きまとっているのか?」

「いえ、離婚したそうです」

 朝倉先生は、ハァーと息を吐いた。
「夏希さん、人が良いから心配だよ」

「大丈夫ですよ。私も大人なんですから」
 とは、言ったものの 先日、隙をつかれてキスをされた事を思い出し目が泳ぐ。
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