名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

 そのセリフを聞いて、ボッと顔が熱くなった気がする。
 何気ないお土産に選んだスパーリングワインが、そんな意味を持つなんて思わなかったから……。

「はい」
 短く返事をした後、顔を上げ、自分から朝倉先生の唇にキスをする。
 自分からなんて恥ずかしいけれど、上手く言葉に出来ない想いを伝えたい。
 そんな想いを込めて、キスをした。
 小鳥が啄むようなキスを何回もした後、唇を合わせる長いキス。
 息継ぎのために唇を放した。

「夏希さん、煽らないでください」
 朝倉先生の艶のある声が耳をくすぐる。

「翔也さん、私……」
 潤んだ瞳で見つめてしまう。

「次の約束まで、じれったい思いをさせるなんて、夏希さん、意地悪ですね」

「そんな……」

「待ちますよ。夏希さん」

 唇に約束のキスを一つ落とされた。
 
 
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