名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
水曜日、将嗣が迎えに来て私と美優の三人で弁護士さんの事務所に到着する。
会議室のような小さな個室に通されソファーに腰を下ろし、弁護士さんと向かい合わせになると少し緊張した。
弁護士さんの説明によると認知届自体は母親の同意が無くても届けが提出できるそうだ。
その話を聞いて驚いた。世の中の色々なケースの中で勝手に提出する事もできるのは怖いことでは? 新たなトラブルが降りかかる可能性だってある。
取り敢えず円滑に話が進んだ自分のケースは幸せなんだろうなと思った。
勝手に提出できるという事は、私が同席しなくても認知届を提出する事ができるという事だ。同席したのは何故なんだろうと思っていると弁護士さんから書類を渡された。その書類には、毎月の養育費や将嗣に万が一の場合に相続権が発生するという内容が記載されている。
まさか、ここまでしてもらえるとは思っていなかった。驚いて、将嗣を見ると彼は、真剣な眼差しで私を見て頷いた。
将嗣に相談せずにシングルマザーになる事を決めた時点で何かしてもらおうとは思っていなかった。
勝手に産んで迷惑だと思う男性も多い中、誠意ある対応を見せられ、将嗣の美優に対しての想いの深さを感じ、サインする時に少し瞳が潤んだ。