名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 チェストの上の写真立てに目をやると、そこには美優が産まれた時に病院で撮影したお守りにしている朝倉先生と私と美優三人で写っている写真がある。あの時の出会いからいつも困った時に助けてくれる朝倉先生。

 憧れの人から好きな人になるまでは時間が掛からなかった。そして、想いが届いて恋人になった。写真立ての横に置いてある携帯電話を手に取り、その人の名前をタップする。
 3回目のコール音の後、朝倉先生の声が聞こえた。
 
『夏希さん、どうしたの?』

「お忙しいのにすみません。翔也さんの声が聞きたくなって」

『私も夏希さんのことを考えていたんだ。声が聞けて嬉しいよ』

 耳に優しい声が聞こえる。
 それだけで、不安が消えて行く感じがした。

「翔也さん、私も声が聞けて嬉しい」

『仕事の区切りがついたら会ってくれるかな?』

「はい、私も会いたいです」

『寒くなってきたけど、美優ちゃん風邪を引いたりしていない? 困った事があったら無理しないで呼んで欲しい』

「美優も私も元気ですよ。翔也さんも無理しないでくださいね」

『ありがとう。誰かに心配してもらえるのは嬉しいね』

「そうですね。私も翔也さんに心配してもらえて嬉しいです」

 他愛ない話をして電話を切るとさっきまで不安にだった気持ちが落ち着いた。
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