名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 「乾杯!」
 ふたりでグラスを鳴らした。
 とはいえ、帰りの事も考えてノンアルコールビールで気分だけのもの。もちろん、将嗣のおごりで出前の特上寿司を頬張った。

 子供を産んでからめっきり外食をしなくなってしまった。外食だと料理が出て来るまでの待ち時間や食べている間など、ジッとしていない乳幼児には退屈で、騒ぎ立て廻りに迷惑をかけるのではないかとハラハラするぐらいなら、家でのんびりご飯を食べる方が気楽でいいからだ。

 今も美優は、ジッとしている事が出来ずにつかまり立ちをしては、ご機嫌な笑顔を浮かべ、オモチャを掴んで自慢げに持ち上げていた。
 そして、将嗣の家には、子供用のオモチャが増えていた。

「こんなに買ったの?」

「いやー、見るとつい買っちゃうよね。子供の物を買うのがこんなに楽しいとは思わなかったよ」

「子供なんて直ぐに大きくなっちゃうから使う期間短いし、もったいないよ」

「親バカだと思って見逃して、気に入ったの持って帰ればいいし」

「うん、ありがとう。パパさん」

 美優のために心を尽くしている様子に感謝の言葉が出る。
 すると将嗣は言いにくそうに話し出す。

「ごめん、後で両親に手続き完了の連絡を入れるんだ。この前の田舎に行く話の返事を聞いていいかな」
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