名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 この前まで田舎に行く事を強引に誘っていたのに 今、気を使った言い方をしているのは、私が結婚を前提とした付き合いをしている人がいると話したからだ。 

 将嗣が復縁を望んでくれたのにその気持ちに応える事も出来ず、美優の件では色々と誠意をもって対応してくれているのに、私は受け取るだけで何一つ返せていない。

 気掛かりはあるけれど、ここは一つ覚悟を決める。

「いとこの紗月も一緒で良ければ、将嗣の田舎に行ってもいいよ。週末絡めてくれると嬉しいな」

「俺もそんなに仕事休め無いから11月の連休とかどう?」

「来月の連休ね。紗月に聞いてみる」

 携帯電話のアプリを立ち上げ、紗月にラインを送ると、直ぐにOKの返信が来た。

「紗月OKだって」

「じゃあ、みんなで温泉だ!」

「うわっ! 将嗣、美女3人に囲まれて贅沢だ」

「ああ、本当に贅沢過ぎて、嬉しいよ」
 と、将嗣はふわりと笑った。
 
 将嗣と私は、美優の父親と母親として切れない縁が出来た。
 この先、美優が成人するまでは、少なくとも関係は続いて行く。
 微妙な距離感に緊張している自分。
 恋人でもない、友人でもない、家族でもない。でも、美優のパパとママの関係だ。

 私が朝倉先生と付き合い始めたように、この先、将嗣が誰かと付き合うこともあるはずだ。
 その時、私はどんな感情を持つのだろう。そんな事をふと思った。
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