名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「将嗣さんは、認知という形で責任を取ってくれました。それに復縁をお断りしたのは私の意思なので、許すも許さないもないんです」
体調の良くない将嗣のお父さんに対して、あまりショックなことを言いたくなかった。でも、変な期待を持たせるのもどうかと思い、咄嗟に言葉を選んだつもりだったが自分が言った言葉がショックを与えていないか、不安で爪の痕が付くほど手を握りしめていた。
その不安を察したように将嗣が私の事を見ていた。
そして、少し寂し気な表情で言葉を紡ぐ。
「親父、夏希の言うとおり、俺はフラれているの。これからは、美優ちゃんのパパを頑張る事で責任を取るんだよ」
「しかし……」
「俺が、半端な事をして夏希を傷つけた。それでも美優ちゃんを産んで育ててくれて、こうして親父も孫を抱く事ができた。夏希には感謝している。俺は夏希に対して、これからも出来る限りのことをしていく。今の時代の責任の取り方をする」
そう言うと将嗣は、美優を高い高いしてあやした。
その目は赤くなり、涙が零れそうなのを誤魔化しているようだった。
将嗣の深い想いに応えられない申し訳なさと、切なさと、有難さに胸が詰まる。