名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「そうよね。ごめんなさい。前のお嫁さんの事、将嗣が何も教えてくれないのよ。お嫁さんに私たちも結納と結婚式でしか会った事がなかったから……。将嗣が浮気して、夏希さんに迷惑を掛けたって話を聞いて、どんな結婚生活を送っていたんだろうって。将嗣が浮気をしたのも将嗣だけが悪かったと思いたくなくって、親バカよね。ただね、普通、こんな田舎に来れないにしても電話で挨拶とかせめて年賀状とかあっても良さそうでしょう。それが一度も無くて、お金持ちのお嬢さんだか知らないけど、ちょっとね。変な事聞いてごめんなさい。将嗣には、内緒ね」
将嗣に聞いた話では、新婚旅行以降、元カレの所に家出状態になってそのまま離婚したとは言っていた。
その話は将嗣がご両親にしていないのなら私が話す事は出来ない。子供の幸せを願う親に中身の無い結婚生活の話をしたら心配を掛けるからで話せなかったのかもしれない。
ただ、子供を持つ親として自分の子供の結婚生活がおかしい事は、薄々気付いたに違いない。
そして、将嗣のお母さんは私の手をとり真剣な眼差しを向けた。
「夏希さん、さっきはああ言ったけど、将嗣の事考えてもらえないかしら……」
その言葉を聞いて、思わず息を吞んだ。言われることを予想していたとはいえ、実際に言われると返事に詰まる。そして、将嗣のお母さんが言葉を続けた。
「夏希さんとの経緯は聞いているし、将嗣が悪かったのもわかっているの、だけれど……。将嗣にやり直しのチャンスを与えて欲しいの」