名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

「私、既に両親を亡くしているので、将嗣さんのお父さんとお母さんが美優にとっての唯一のおじいちゃん、おばあちゃんなんです。これからもよろしくお願いします」
 
 この言葉が将嗣のお母さんが欲しかった言葉ではないと分かっていたけど、目の前にいる将嗣のお母さんをこれ以上悲しませたくなくて言葉を紡いだ。
 
 将嗣のお母さんが独り言のようにポツリと呟いた。
「将嗣は、何を間違えてしまったのかしらね」
 その言葉の意味を色々考えてしまう。
 息子の結婚に対して言っているのか、私との付き合いに対して言っているのか……。
 それ以上、聞き出すことも憚れて、切なかった。
 
 親として、息子の事を思えば、元は将嗣が悪いにしても子供に対して認知をして、私に求婚したにも関わらず、他に好きな人がいるという理由で断れれば、私が浮気女のように写るのかもしれない。

 誰かを大切に思えば思うほど時として、歪んで見えることがある。
 それが恋愛でも親子の愛でも……。

 小皿を運びながらキッチンから出てリビングに移ると紗月が美優を抱っこして、「夏希ちゃん」と私を小さな声で呼んだ。「なに?」と小さな声で返すと「大丈夫?」と聞かれて「大丈夫だよ」と返した。
 紗月に抱かれて少し眠たげな美優を見ていると何があっても頑張れそうな気がした。
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