名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
一難去ってまた一難
「夏希?」
 私を呼ぶ声が聞こえて、ゆっくりと目を開けた。すると、心配そうに覗き込む将嗣の顔が見える。

「夏希……気が付いたか、ああ、良かった」

 将嗣の言葉に段々と意識が覚醒して来る。
 自分に迫る車、降り注ぐガラス、美優の泣き声がフラッシュバックした。

「美優! 痛っ」

 ベッドから起き上がろうとしてしたが、体に痛みが走り上手く起き上がれない。視線を彷徨わせて美優を探した。

「美優は?」

「美優ちゃんも紗月さんも無事だよ。今、待合室で紗月さんがあやしてくれている。ごめんな。痛いだろ? お前の席にモロに突っ込まれたもんな……」

 将嗣は、私の頬に手を当て今にも泣き出しそうな顔をしている。

「将嗣のせいじゃないよ」

 コンコンとノック音と共に、看護師さんが入って来て、検温や血圧などをしてくれる。
 指先動きますか? 手足にしびれを感じませんか?など聞き取りもされ、段々と不安が募る。

「あの、私、どうなっているんでしょう?」

「左足の細い方の骨が折れているのと足首のじん帯傷めてしまったのが一番重傷で、あとは首のむち打ちと、左腕前腕を5針縫ったけど傷は深くなかったから抜糸をしたら動かせるようになります。入院1か月、全治3か月よ」

「えっ! 1か月も入院って……」
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