名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「俺、何日か休みをもらえるように調整してもらっている。紗月さんは、明日帰るとして、俺は少しなら残れるから一緒に考えよう」
「うん」と返事をして白い天井を見上げると入院期間や退院してから完治するまで満足に動けない状態での子育てに不安ばかり募り、また、泣きそうになった。
「美優ちゃんの事も一緒に考えよう」
認知届を出したことによって、将嗣もパパとしての責任が生まれた。シングルマザーとして一人で美優のことを心配していたけど頼れる人がいるのは心強い。
病室のドアが開き、紗月が戻ってきた。
「病室で電話OKだって、手術室とか放射線のあるところはダメなんだって、昔とイメージ違うんだね」
病室で電話OKだと聞いてホッとした。右手に点滴、左手に裂傷の包帯でも通話ボタンぐらい押せる。と、思ったら首が動かない、腕が曲げられない状態で、スマホの画面が見えない。
自分の状態が思っていたのと違う。
誰かに操作してもらってからハンズフリーで通話するしかない状況。
かと言って、将嗣に朝倉先生への通話をお願いするのは無神経な気がする。
将嗣の前で誰に電話を掛けたらいいのか考えあぐねた挙句口を開いた。
「ごめん、編集さんに電話したいんだけど、画面が見えないから通話できるようにしてくれる? ハンズフリーでね」