名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「病院の先生とも今後の予定を話してみるからな」
「うん、よろしく」
一日も早く家に帰りたい気持ちを抑えて将嗣に返事をした。
「紗月、ごめんね。大変な旅行になっちゃったね」
正直言って、この後、紗月が帰ってしまうのは、知らない土地でアウェー感が凄くて心細くなってしまう。
「私は大丈夫。それより夏希ちゃん、早く治して帰って来てね」
「ありがとう。ごめんね」
先に帰ってもらうだけだというのに、凄く寂しい。
紗月は何度も振り返りながらバイバイと手を振り、私も点滴の付いた右手を小さく振った。
紗月を駅まで送る為、美優を連れて将嗣も居なくなってしまった。
また、病院で何も出来ない時間が始まる。
ため息まじりに天井を眺めているとコンコンとノック音がする。
みんなが出て行ってから10分位しか経っていないのに何か忘れ物でもあったのかな?
「はーい」
返事の後にドアが開く。
そこに現れた人が思ってもみなかった人で驚き過ぎて言葉が出なかった。
「夏希さん」
私を呼ぶ声は、紛れもなく私が聞きたかった声だ。
「……翔也さん」