名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
家から遠く離れた土地で事故に遭い、美優のことが一番の心配だった。

 将嗣もいつまでも仕事を休めないだろうし、将嗣のお母さんもお父さんのお世話がある。このままだと役所に相談して児童施設に一時預かりになりかねない。

 もし、朝倉先生に見てもらえるなら安心だと思う。
 しかし、美優のことは、認知届を出した事で将嗣にも父親としての責任がある。そして、そのことで私が一人で決められないという側面もある。

 返事に詰まっていると朝倉先生は、心配そうに私の顔をジッと見つめた。

 本当は、朝倉先生の申し出をこの場で受けてしまいたい。でも……。
「翔也さんのプランは嬉しいのですが、入院期間や今後の予定が午後に検査があって、その結果待ちになりそうなんです。あと、美優のことは園原と相談しないと……」

 心苦しいが、自分一人で決められない。
 視線を泳がせると、朝倉先生は私の右手にそっと手を重ねた。
 その手が、少し緊張しているような気がした。

「いや、無理を言って悪かった。つい、心配で……気持ちが先走ってしまったようだ。それに少し寂しかったんだよ」
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