名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「夏希さんや美優ちゃんを取られてしまったように感じているのは、お互い様なんだろうけどね。やっぱり、夏希さんが事故に遭って大変な事を知らないままだったのが酷く堪えた。ごめん、怪我人の夏希さんを困らせるような事を言っているね」
朝倉先生の瞳がユラユラ揺れて見える。
その悲しそうな瞳に吸い込まれそうになった。私の頬を朝倉先生の手が包み込み、ユラユラ揺れた瞳が近づき唇に唇が重なる。
お互いの熱が伝わり、その熱が二人の間にある不安を溶かすように感じた。
「温かい……」
唇が離れると朝倉先生が小さく呟いた。
その言葉の意味を考えると、朝倉先生をどれだけ不安にさせていたのだろう。頬に添えられた手が、私の顔の輪郭を撫でる。
それは、私を確認しているようにも思えた。
「翔也さん、遠くまで来させちゃってごめんなさい。本当は翔也さんに連絡したかった。声を聞きたかったし、会いたかったの。だから来てくれて嬉しい」
言葉を紡ぐと、朝倉先生は、もう一度キスを落とした。
さっきのキスより深く熱いキス。
そして、唇が離れると私の耳元に朝倉先生が囁くような言葉が聞こえた。
「私も夏希さんに会いたかった。声を聞きたかった。また会えて良かった。夏希さんの顔を見るまで不安で不安で……本当は、このまま、家に連れ去ってしまいたい」