名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
午後の検査も終わり、病室でウトウトしていると軽いノック音と美優の声が聞こえた。
「夏希、悪い寝てた?」
心配そうに私を見る将嗣とご機嫌な美優が目に入ってきた。
「美優がご機嫌さんだね」
「そう、いい子だよなぁ」
と二人で親バカ状態で美優をホメ合う。
「さっき、将嗣のお母さんが来て、事故の事謝ってくれて、美優のお世話をお願いしたら引き受けてくれたよ」
「ごめんな。うるさかっただろ。落ち着いたら連れて来てやるって言ったのに勝手なことして……」
「なんだか張り切っていたよ。お父さんの介助もあるのにパワフルだね」
「ムダに元気だよな。その元気、親父に分けてやれって思うよ」
ハハッと、力なく笑った様子が少し気掛かりだった。
「お父さん早く元気になるといいね」
「うん、そうだな」
将嗣が悲しそうに笑い、その事が病気の重さを物語った。
お家に伺った時もお加減は良くなさそう様子で、将嗣はお父さんと二人で長く話をしていた。
静かに命の炎を灯している。家族としてその炎がだんだんと小さくなって行くのを見つめるのは辛いだろうな。