名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「美優がいると将嗣のお父さんとお母さん疲れちゃうね」
「そうそう、” 孫は来て良し、返って良し ”って、言うだろ?」
「何それ、初めて聞いた!」
将嗣の説明だと、孫が来るのは楽しいが、来ている期間はとっても大変で帰るとホッとする。祖父母の話だと言う。
将嗣のことわざ創作疑惑は拭えないが、説得力があるのでウンウンと頷いておいた。
看護師さんが、検査の結果を話たいのでと声を掛けられた。
私の代わりに将嗣が行ってくれる。委任状を出しておけば代理で話が出来るのは便利だけど、夫婦でもない将嗣が代理なのは、どうなのかな?と思いつつサインをした事を思い出した。
病室に将嗣が戻って来て、担当医師との話し合いの結果、地元の病院への転院が五日後に決まったと教えてくれた。
「なあ、当日、車で戻ろうと思っていて、医療用の車を手配して運転手頼むことになるんだけどいいかな?」
「うん、病院移るまでの事だから任せる」
将嗣はホッとした表情を見せた。
「後は、地元の病院に行ってからか……。俺の休みも今週いっぱいだしな」
「土曜日に移動で、日曜は休み、問題は月曜日からだね。それも残り3週間、私の退院後も子供を抱いて歩ける状態じゃないかもだし……」
私はそう言って、将嗣をチラリと見る。
朝倉先生の ” 美優のお世話を任せてくれないか ”という提案をどう考えているのだろうか?
あの時は、少し考えさせてと言っていたけど、意地を通すなら預け先を探さないといけない。
将嗣は、美優を見つめながら ” はぁ~ ” と大きなため息を吐いた。
「仕事をしながら子育てって大変だよな。夏希は、具合が悪い時でも美優を見ながら仕事をしてきたんだろ」