名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

 朝倉先生の優しさに包まれ、今までずっと助けくれた数々の出来事が心中に蘇る。胸の奥から喜びが湧き上がり自然と涙があふれ出す。

「夏希さん……」

 私の涙を拭うように朝倉先生の唇が眦に寄り添うと、ウッディな香水のラストノートと朝倉先生の香りがする。温かく節のある大きな手が、私の左手を取り、そっと薬指に指輪をはめた。
 ピンクダイヤモンドがメインのデザインで、横に同じ色の小さいピンクダイヤが寄り添っている。
 
大小のピンクダイヤモンドが二つ寄り添っているその指輪は、まるで美優と私のようで、朝倉先生の顔を見ると「そうだよ」と言っているように頷いた。
 指輪の嵌った左手を右手で支えながら目の高さに持ち上げ、マジマジと眺めていると、徐々に実感が湧いてきた。
「翔也さん、ありがとうございます」

「出来れば、素敵なレストランでプロポーズをしたかったのですが……。入籍を美優ちゃんの誕生日にしようかと思って早めてしまいました。これで、美優ちゃんには両親が揃った家庭が出来ます。誰が何を言っても夏希さんから美優ちゃんを取り上げるような真似はさせません」

 朝倉先生の気持ちが温かくて、こんなに大事に思ってもらえるなんて、言葉にならない想いが胸の奥から溢れて、せっかく治まった涙が、はらはらと頬を伝わる。

「ありがと……う……ございます」
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