名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 私は、将嗣の背中を見送ったあと深呼吸をした。
 美優の子守の引き渡し場所が病室で、朝倉先生と将嗣が顔を合わせる状況にやっぱり緊張する。それに今日は将嗣と色々話をした後だったし……。

  「婚約のお祝いの言葉をもらいましたね」
 将嗣が出行ったドアを見つめ朝倉先生が呟いた。

「はい、私も幸せになれって言ってもらいました」

「幸せにしないと後が控えていると牽制されたようだ」

 やっぱり、さっきのやり取りにはそういう含みがあったんだ。あの緊張感は私の勘違いではなかったんだ。
 ふと視線を落とすと左手の薬指にはまったピンクダイヤモンドの婚約指輪が目に入った。
 
「あっ、翔也さん。お願いがあります。指輪を失くすといけないので預かって頂けますか」

「わかりました。婚約指輪は、退院するまでお預かりします」

 朝倉先生は、私の手を取り、指輪を外した。
 そして、薬指の指輪があった所にキスを落とし、艶のある瞳で私を見つめる。
 
「夏希さん、私は結構、焼きもち焼きなんですよ。覚えてくださいね」
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