名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
窓の外は、日も落ちて病院の中庭の樹木に施されたクリスマスイルミネーションが点灯された。
もうすぐ、美優の誕生日。
陣痛で苦しんで、街路樹に寄りかかって、痛みに苦しんだあの日から1年が経つ。
自分の人生の分岐点になったあの日。
苦しんでいた私に手を差し伸べてくれた人が現れた。
人生何が起こるかわからない。
そんなことを考えていたせいか、コンコンとノック音がして朝倉先生の「こんばんは」イケボと共にドアが開く。
美優が朝倉先生に気が付くと、抱っこをねだるように小さな手を伸ばした。
うーん、我が子ながら、なかなかの世渡り上手かも!?
私はドキドキとしながら将嗣に抱かれた美優の様子を見守っていると、将嗣が朝倉先生に声を掛ける。
「朝倉さん、お疲れ様です。美優のお世話をお願いします。次回火曜日ですね。それと、ご婚約おめでとうございます。何かありましたらいつでもご連絡ください」
んっ⁈ これは? 応援してくれる感じだったのに牽制している!?
と、少しドキドキしながら二人のやり取りを見つめた。
「ありがとございます。大切にお世話させて頂きます」
と、朝倉先生は美優に手を差し伸べ、将嗣の手から美優を譲り受けながら余裕の微笑みを返す。
将嗣がフッと笑い。
「よろしくお願いします。夏希、今日は帰るからな。お幸せに!」
「将嗣、ありがとう」
手をひらひらさせて病室から出て行く、その後ろ姿に向かってもう一度、声を掛けた。