名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 食事も終わったし、これ以上無駄に引き延ばしてしまうと折角固まった気持ちが崩れそうだ。
 食後のお茶を入れ、テーブルの上に置いた。
 そして、深呼吸をしてから言葉を吐き出す。

「将嗣、話をしましょう」
  将嗣から美優を受け取る時に視線が合い、思わず後ろめたさのせいか目を逸らしてしまった。
 テーブルを挟んで向かい合わせに腰を下ろすと、緊張が高まる。

「夏希、あの時は、すまなかった」
 
 なんと返事をして良いのか分からず複雑な思いでいた。

「俺が、結婚していた事を隠していたのは悪かったと思っている。 実は、俺の結婚生活当初から夫婦として破綻していたんだ」

「えっ?」

「勤め先の歯科医医院の院長に気に入られ、院長の娘と引き合わされた。将来の跡継ぎとして嘱望され、話がトントン拍子に進んだ。妻となった医院長の娘・亜矢も乗り気に見えたし、美人だったし、当時、恋人もいなかった俺に、結婚の条件としては申し分ない相手だった。新婚旅行から帰ってきて、新居で暮らし始めたら亜矢の態度が一変して、なんて言われたと思う?」
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