名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
滝沢さんにお礼を言ってお宅を後にした。
 まだ、熱は下がり切っていないものの行に比べて体が軽くなっている。車の中で後部座席に横になりながら、朝倉先生が作る心地良い空間にいつまでも居たいと思った。

 車が自宅に到着した頃にはチャイルドシートの上で美優はスヤスヤと眠っている。朝倉先生が、そっと抱き上げ「よく眠っている」と微笑む。
 玄関を開けてベビーベッドに降ろすと、少しフニャフニャ言っていたが、朝倉先生が美優の胸の上にそっと手を添えると安心したようにそのまま大人しく眠り。その手慣れた様子に関心するばかりだった。

「谷野さんも少し眠った方がいい。まだ、無理は禁物だ。谷野さんが寝ている間に買い物に行ってくるから鍵を貸してくれる?」

「朝倉先生、お忙しいのにそんな……。今日、滝沢さんのところに連れていってくださっただけでも十分助かりました。それにしてもよく私が乳腺炎だって分かりましたね」

 そう、朝倉先生に症状を伝えただけで、滝沢さんの所に連れていってくれた。

「姉貴がね。実家に帰って来て大騒ぎしているのを見ているから もしかして、と思ったんだ。さっきも姉貴に相談したらすぐに滝沢さんのところに行けって言われて、何が役に立つかわからないものだね」
 
「ありがとうございます。先生には、助けてもらってばかりで、いつか私にお返しが出来ればいいのですが……」
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