御曹司は天使クラス ~あなたのエールに応えたい~
 キャンプに行った後から、二人で会うようになったのは知っていたが、想像以上に二人の仲は発展しているようだ。現金なもので、濱見崎とつきあうようになってからは、敏恵は夏美の部屋に突撃訪問しなくなっていた。
「よかったじゃないですか。じゃあ、トシさんも濱見崎先生と…」
「まだ、わからないけど。でも、今が幸せだから、いいの」
 もともとハイクラスな美人の敏恵だが、恋をしているせいか、さらにしっとりとした美女になっている。恋の力ってすごいなあ、と夏美は思った。
「沢渡さん!じゃなくて、中河さんか。すごい綺麗ね!」
 そう言って、敏恵に続けてやって来てくれたのは、宮下あずさだった。
「宮下さん!久しぶり…って、え。そのお腹、ひょっとして?」
 紺色のシックなワンピースを着たあずさだったが、そのお腹が少し、出ている。
「うん。できちゃった。秋には出産よ。今日、驚かそうと思って黙ってたの」
「もう!早く言ってくれたらよかったのに!おめでとう!」
 敏恵に続いてあずさが。こんなにいいことが続くなんて、さすが大安吉日だ。
「人におめでとうばっかり言って。今日は、主役だよ、なっちゃん。わかってる?」
 そう言ってやって来たのは、舞を連れた康子だった。
「なっちゃん、おめでとうございます」
 ぺこり、と可愛い髪飾りをつけた舞がお辞儀してくれる。
「舞ちゃん!今日も可愛いっ。来てくれたのね。宮下さん、トシさん、この子がいちごちゃんのモデルの舞ちゃん」
 敏恵とあずさは、わあっと感嘆の声をあげた。ほんとだ可愛い、実物のいちごちゃんだ!とひとしきり騒然となった。
「うわ。女の園だ。僕の居場所ってあるかなあ?」
 そう言って、にやにやしながら女子群の中に入ってきたのは、隆だった。白のタキシードを着た隆は、おそろしく似合っていた。栗色のふわふわ頭が普段より、いっそう際立って美しい。宗教画の天使のようだ。
 夏美は、重いドレスを持ち上げ、そっと隆の耳元でささやいた。
「さすが天使様。よくお似合い」
「でしょ」
 満足げに隆は微笑んで見せた。
「ちょっと、式の前でいちゃつかないでよ」
 敏恵が不満げな声をもらす。
「ごめん、ごめん。だって僕の奥さん綺麗なんだもん」
 皆の前で、そんな風に言われると、夏美も赤くなってしまう。
 
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