御曹司は天使クラス ~あなたのエールに応えたい~
夏美はちょっとだけ、車の窓をあけた。気持のいい春の風が入ってくる。
「今日ね。改めて思ったんだけど」
うん、と隆が言う。
「夫婦っていいな、って思ったの。一人だったら、嫌なことされても、一人で怒るしかないけど。夫婦だったら、相手の分も怒ってくれるんだなあって」
「そりゃあ、そうだよ。夏美ちゃんが傷つけられたら、僕は怒るよ。普通のことじゃない」
普通じゃない人も多いだろうなあ、と考えながら夏美はうとうとしだした。空に、黄色い月が浮かんでいた。
5月になり、いよいよ夏美は結婚式を挙げる日がやってきた。昨日の夜は、緊張してあまり眠れなかった。今日という今日は、間違いなく式の主役なのだ。パーティと言えば、隅っこの方にいたい夏美も、今日ばかりは逃げられない。
しかも。
「ウェディングドレスって重い…!」
夏美は、さっきメイクを担当者にしてもらって、それからドレスを着たところだった。後一時間もせずに式が始まる。普段つけなれないつけ睫毛をしただけで、顔が重いと思っていたら。想像以上にドレスが重かった。
今、花嫁の控え室で、夏美は鏡の前で立っている。さっきまで花嫁世話係さんもいたのだが、用事を思い出したらしく、今はいない。控え室に夏美ひとりで、ドレスの重さに溜め息をついていたのだ。確かに、ドレスは美しいビーズを散りばめられていて、指先まで覆われたレースは厳かに繊細で麗しいのだけれど。
「これで12センチヒールで歩くわけよね…転ばないようしっかりしないと」
履いている靴も普段履くローヒールとは大違いだ。何から何まで今日のための特別仕様。無事に一日を終えられるだろうかと、ドキドキしてくる。
「夏美さん、おめでとう」
ドアを開けてやってきたのは、敏恵だった。レースをあしらったドレスにピンクの花のコサージュが可愛い。
「トシさん!ありがとう、来てくれて」
知った顔を見ると、やはりほっとする。何気なく敏恵の手を見ると、リングが光っている。美しいトパーズの指輪だ。
「トシさん、ひょっとして、それ…!」
敏恵は、うふっと笑ってみせた。
「濱見崎先生から、誕生日プレゼントにもらったの」
「今日ね。改めて思ったんだけど」
うん、と隆が言う。
「夫婦っていいな、って思ったの。一人だったら、嫌なことされても、一人で怒るしかないけど。夫婦だったら、相手の分も怒ってくれるんだなあって」
「そりゃあ、そうだよ。夏美ちゃんが傷つけられたら、僕は怒るよ。普通のことじゃない」
普通じゃない人も多いだろうなあ、と考えながら夏美はうとうとしだした。空に、黄色い月が浮かんでいた。
5月になり、いよいよ夏美は結婚式を挙げる日がやってきた。昨日の夜は、緊張してあまり眠れなかった。今日という今日は、間違いなく式の主役なのだ。パーティと言えば、隅っこの方にいたい夏美も、今日ばかりは逃げられない。
しかも。
「ウェディングドレスって重い…!」
夏美は、さっきメイクを担当者にしてもらって、それからドレスを着たところだった。後一時間もせずに式が始まる。普段つけなれないつけ睫毛をしただけで、顔が重いと思っていたら。想像以上にドレスが重かった。
今、花嫁の控え室で、夏美は鏡の前で立っている。さっきまで花嫁世話係さんもいたのだが、用事を思い出したらしく、今はいない。控え室に夏美ひとりで、ドレスの重さに溜め息をついていたのだ。確かに、ドレスは美しいビーズを散りばめられていて、指先まで覆われたレースは厳かに繊細で麗しいのだけれど。
「これで12センチヒールで歩くわけよね…転ばないようしっかりしないと」
履いている靴も普段履くローヒールとは大違いだ。何から何まで今日のための特別仕様。無事に一日を終えられるだろうかと、ドキドキしてくる。
「夏美さん、おめでとう」
ドアを開けてやってきたのは、敏恵だった。レースをあしらったドレスにピンクの花のコサージュが可愛い。
「トシさん!ありがとう、来てくれて」
知った顔を見ると、やはりほっとする。何気なく敏恵の手を見ると、リングが光っている。美しいトパーズの指輪だ。
「トシさん、ひょっとして、それ…!」
敏恵は、うふっと笑ってみせた。
「濱見崎先生から、誕生日プレゼントにもらったの」