すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
 本当は私、ビールか日本酒でもいいかなって思ったんだけど、大好きなヒロとの初めての宅飲みだし……何となく女の子っぽさをアピールしてみたくなっただけ。

 ――それにっ。いつぞやみたいに酔い潰れるわけにはいかないのよ!

 それぐらい汲みなさいよね?

 思って、ちょっぴり唇をとんがらせたら、
「今更猫被らなくても俺、コトのこと結構知ってるつもりだからな?」
 って声のトーンを変えて少し(かが)みがちに耳元へささやいてくるとか……ずるい。


「俺さ、一緒にいてコトがあんまし気負わずにいられるような、そんな存在になりてぇんだよ」

 付け加えるように言ってから、私の頭をクシャリと撫でると、「ま、最初は緊張しちまうだろうけどな」って笑うの。

(やな)……ヒロも今、実は緊張してたり……する?」

 ふと思って問いかけたら、「さぁな」って応えてそっぽを向いたヒロの耳が、ほんのちょっぴり赤みを帯びていて嬉しくなる。

 緊張してるのは私だけじゃないんだね。
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