すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
 私と同じように黒縁の眼鏡をかけていたにも関わらず、園村先輩は全然野暮ったくなくて。

 ウルフカットの髪の毛をシルバーアッシュに染めている時点で黒髪の私と比べるのは烏滸(おこ)がましいのだけれど、それにも増してニッと笑った時に見える八重歯が人懐っこさを醸し出している人だった。

 実際私も彼の笑顔にほだされて、少しずつ会話できるようになれたのを思い出す。

「俺のことはみんな〝そのさん〟って呼んどるし、先輩って言われるんは何かくすぐったいからそれで。――んで、キミは……」

 言われて、自分がまだ名乗っていなかったのを思い出した私は「鳴宮(なるみや)言凛(ことり)です。口偏(くちへん)に鳥の鳴(なる)に、お宮の宮。言凛(ことり)は言うって字に凛(りん)で言凛(ことり)って無理矢理読ませます。――えっと……2年生です」と自己紹介したんだ。

 最初は「鳴宮(なるみや)さん」と呼んでいたそのさんだけど、会がお開きになる頃には「鳴宮(なるみや)」になっていて。

 このゼミの中で、私を「鳴宮(なるみや)」と呼び捨てにするのは柳川(やながわ)とそのさんだけだ。


 その、そのさんが私の手をギュッと握ったままズンズン歩き出す。

 身長が柳川(やながわ)よりも数センチ高いそのさんは、近くに立つと本当に迫力がある。

 研究室にいた関係で、白衣を羽織ったままのそのさんの背中をぼんやり見つめながら、てっきり研究室に連れ戻されるのかと思っていたのに、たどり着いた先はこのフロアの最奥にある非常階段の踊り場だった。

 ここは、場所的に滅多に人がこない。
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