すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
「私……。き、……そのさんに合わせる顔がない……から」

 〝究(きわむ)さん〟と言いかけて、昔のように敢えて〝そのさん〟と言い直した私に、柳川(やながわ)が小さく息を呑んだのが分かった。


 私は柳川の反応を見て、どんどんそのさんに対して後ろめたい気持ちが募って。

 それは、そのさんと2人で計画した嘘をつき通せなかったことに対する罪悪感と。こんな状況になってしまってでさえ、柳川と2人きりで居られることを喜んでしまっている自分の浅ましさと――。

 色んなものが混ぜこぜになった後ろめたさだ。



「なぁ、鳴宮(なるみや)。俺、お前が何考えてんのかサッパリ分かんねぇんだけど」

 苛ついたようにガシガシと頭を掻いて、柳川がじっと私を見下ろしてくる。


「……余計なお世話かも知んねぇけど……もしかしてそのさんとうまくいってねぇのか?」

 壁にもたれ掛かったまま。ギュッと唇を引き結んで柳川の視線を受けた私に、一瞬視線を彷徨(さまよ)わせてから、柳川が気遣わしげな声をかけてきた。


 ――私はそれに、何て応えたらいいんだろう?


 先輩と私は最初から偽装の恋人ごっこだったもの。

 うまく行っているように見えたとしても、実際はそれそのものが虚構だ。



 私が返答しあぐねていたら「あれ? ふたりともこんな所で何揉めよーるん?」と声を掛けられた。

 見ると、飲み物のペットボトルを手にそのさんが階段を上がってきたところだった。
< 74 / 172 >

この作品をシェア

pagetop