すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
 え?
 柳川(やながわ)、今、何て……?

 柳川の言葉に私、思わずコーヒーをかき回すスプーンが止まって。

「あの……柳川、その……えっと、か、花々里(かがり)さんのこと……」

「人妻じゃどうにもなんねぇだろ。キッパリスッパリ諦めたよ。――ま、そうは言っても誰かに話せたの、実はお前が初めてなんだけどな」

 ってコーヒーカップ越しに瞳を細めるの。

 私が初めて?
 何で私?

 深い意味はないって分かっていても、そこに意味を求めたくなってしまう。


「……そ、そう、なんだ」

 思わず声が上擦って、喉が小さく鳴った。

 ってことは……えっと……私……柳川に気持ちを伝えても問題ないってこと?


 ぐるぐるぐるぐるティースプーンでコーヒーをかき混ぜながら、私の頭の中はフル回転。


「――それ、そんな、溶けにくいミルクだったのか?」

 あんまり激しくかき回し続けたもんだから、柳川に怪訝(けげん)な顔をされてカップの中を覗き込まれて……。

 思いのほか顔が近くに寄せられたことにビックリした私は、「ひゃっ」って小さく声を漏らして、スプーンを持つ手をぎこちなく離した。

 途端飛び跳ねたティースプーンがコーヒーの表面を叩いて、カップから小さな飛沫(しぶき)が上がった。

 それはあろうことか柳川の白いTシャツを濡らして。
< 81 / 172 >

この作品をシェア

pagetop