すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
「――鳴宮(なるみや)も着替えたんだな」

 コーヒーカップを口元に上げたままポツリと落とされた言葉に、私の心臓は小動物のものみたいに忙(せわ)しなくビートを刻む。


「うん……。汗かいたし……」

 そこでふと気になって、「変かな?」って、角砂糖を1つ、シュガートングで持ち上げながら何気ない風を装ってつぶやいたら、「いや、可愛いよ」ってサラリと言われて「ひゃー!」となってしまう。

 柳川(やながわ)の低音ボイスが紡ぎ出す、無意識の褒め言葉のパンチ力に、思わずピクッと手元が狂った。

 それと同時、湯気の燻(くゆ)るティーカップに、お砂糖が思いのほか上から落っこちてしまって、ポチャッと紅茶が飛び散って。
 幸いさっきみたいに服には飛んでこなかったけれど、ソーサーに少しこぼしてしまった。

「お前、ホントおっちょこちょいで目が離せねぇよな」

 クスッと笑われて、渡された紙ナプキンを「柳川(やながわ)のせいだよ!」と心の中でつぶやきながら受け取って、

「あ、ありがと……」

 言いながら、耳まで真っ赤になっているのが、熱さで分かる。
 なまじ髪を上げたりしてるから、バレバレかも知れないって思ったら、恥ずかしくて堪らなかった。


 こんな恋人みたいな時間を柳川と持てたことを嬉しく思うと同時に、そのさんとは1ヶ月以上一緒にいても、こんな気持ちは芽生えなかったなって思ったのを思い出す。
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