冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
この結婚に、母はいっさい関わらせてもらえなかった。というより、最初に実父が告げに来た以降は、少しも介入できずにいた。
当事者である私ですら、顔合わせ以外で一矢さんと会う機会もなかったのだから仕方がない。
おまけに愛人の子である事実を隠して、陽と入れ代わっているのだ。母の存在を緒方家に知られるのはまずいのだろう。
実の母をいないものとしなければならない現実が、とにかく辛かった。
『優。ひとつだけ、わかったことがあるの』
なんの話だろうと、母の説明を待った。
『陽お嬢様だけど……』
母はもう、三橋家の使用人ではない。それでも本妻での子である陽を〝お嬢様〟と呼んでいるのは、京子の言いつけがあるからだ。どんなに理不尽な思いをしても、世間的には浮気相手でしかない母やその娘の私は、本妻の言葉には逆らえない。
『どうも、緒方さんとの結婚が決まる以前から好きな人がいたようなの。そうとは知らずに、すでに三橋家と緒方家の間では話がまとまりつつあって、後戻りできない状態だったみたいでね。お嬢様も話を聞いて一度は納得されたはずなのに、土壇場になってなにも言わずに家出してしまったみたいで』
三橋の使用人の中には、母と正信との関係を知ったうえでずっと気にかけてくれていた女性がいる。いまでも勤めているその人が、いろいろと母に教えてくれたようだ。
『なんでも、お相手が仕事の都合でアメリカに転勤が決まったとかで、お嬢様もついていってしまったんですって』
ずいぶんとスケールの大きな家出に驚いた。その行動力も決断力も、私にはないものだ。
「お嬢様は幸せなのかしら?」
『さあ、どうかしらね。私も詳しく知らないけど……』
当事者である私ですら、顔合わせ以外で一矢さんと会う機会もなかったのだから仕方がない。
おまけに愛人の子である事実を隠して、陽と入れ代わっているのだ。母の存在を緒方家に知られるのはまずいのだろう。
実の母をいないものとしなければならない現実が、とにかく辛かった。
『優。ひとつだけ、わかったことがあるの』
なんの話だろうと、母の説明を待った。
『陽お嬢様だけど……』
母はもう、三橋家の使用人ではない。それでも本妻での子である陽を〝お嬢様〟と呼んでいるのは、京子の言いつけがあるからだ。どんなに理不尽な思いをしても、世間的には浮気相手でしかない母やその娘の私は、本妻の言葉には逆らえない。
『どうも、緒方さんとの結婚が決まる以前から好きな人がいたようなの。そうとは知らずに、すでに三橋家と緒方家の間では話がまとまりつつあって、後戻りできない状態だったみたいでね。お嬢様も話を聞いて一度は納得されたはずなのに、土壇場になってなにも言わずに家出してしまったみたいで』
三橋の使用人の中には、母と正信との関係を知ったうえでずっと気にかけてくれていた女性がいる。いまでも勤めているその人が、いろいろと母に教えてくれたようだ。
『なんでも、お相手が仕事の都合でアメリカに転勤が決まったとかで、お嬢様もついていってしまったんですって』
ずいぶんとスケールの大きな家出に驚いた。その行動力も決断力も、私にはないものだ。
「お嬢様は幸せなのかしら?」
『さあ、どうかしらね。私も詳しく知らないけど……』