若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 朝からゆっくり食事を楽しめることが信じられなくて、マツリカはふだんよりも神妙な顔で和食膳にありついた。豪華客船ハゴロモで食べられるだけあってお味噌汁だけでなく卵焼きも焼き鮭も、上品な味付けだったし、なにより白米そのものがまるで竈で炊かれたものであるかのようにほくほくで美味しかった。向かいに座っているカナトはその白米に容赦なく生卵をかけているが。

「たまごかけごはん?」
「失礼。見苦しかったか?」
「いいえ。若き海運王さまにも人間らしいところがあるのだなと」
「なんだよそれ」

 卵かけご飯がすきなんだよ、と不貞腐れるカナトを見て、マツリカはくすくす笑う。
 こうしてみると年相応の、自分とさほど年齢の変わらない二十五歳の青年だ。

「あと、いいかげんに若き海運王なんて呼ぶんじゃない。カナトだよ。まつりいか」
「カナトさまこそ子どもの頃の呼び名で呼ぶのはやめてください。あたしはマツリカです」

 朝食をともにして緊張がほどけたのか、お互いの呼び名についてようやく干渉しあえるようになったな、とカナトは心のなかで呟く。
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