若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
食事を片付けてもらうあいだにカナトとともにバルコニーに出たマツリカは、星空の下で黒光りする波を目の当たりにして、遠ざかるハワイに想いを寄せる。クルーズはまだ全体の半分にも満たないが、事故当時のことを知る仰木からはなしを訊くことができたのはおおきな収穫だろう。けっきょく、父親がなぜ死んだのかはわからないままだったが……
「ごめん。とっておきの場所に案内してあげるって言っていたのに、けっきょく寄り道しないで船に戻っちゃったね」
「ううん。あたしの方も余裕がなかったから。それに、カナトがあたしのために仰木さんとコンタクト取ってくれたってわかったから、それだけで充分」
「そう? それにしては浮かない顔をしているな」
心配そうに顔を覗き込まれ、マツリカはふいと顔を背ける。さきほどの口移しを根に持っている彼女は素直にカナトと向き合おうとしない。ハワイを発つ前に比べて顔色は良くなったが、いまの彼女にはコンシェルジュの仕事をしているときのような快活さがどこにもなかった。
「事故当時のことをあたし、なにも覚えてないんだな、ってあらためて思ったの」
「ごめん。とっておきの場所に案内してあげるって言っていたのに、けっきょく寄り道しないで船に戻っちゃったね」
「ううん。あたしの方も余裕がなかったから。それに、カナトがあたしのために仰木さんとコンタクト取ってくれたってわかったから、それだけで充分」
「そう? それにしては浮かない顔をしているな」
心配そうに顔を覗き込まれ、マツリカはふいと顔を背ける。さきほどの口移しを根に持っている彼女は素直にカナトと向き合おうとしない。ハワイを発つ前に比べて顔色は良くなったが、いまの彼女にはコンシェルジュの仕事をしているときのような快活さがどこにもなかった。
「事故当時のことをあたし、なにも覚えてないんだな、ってあらためて思ったの」