若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 ライバル会社の令嬢になったマツリカが、かつて彼女を苦しめた亡き父親の会社の経営者の息子と結ばれるなんて、許せない。
 それに、マイルは義母と約束したのだ。りいかを幸せにすると。死んだ航海士の父親の記憶をほぼ失っている彼女をこれ以上、苦しめないように。

「うわ、怖いこときいちゃったなぁ」
「オレは本気だ。りいかを姉だと思ったことなんか一度もねぇよ」

 義理の姉弟同士なら法の網をかいくぐって結婚することだって可能だ。義母は日本で居場所を得られなかった娘のヤドリギにマイルを選んだ。ふたりが一緒にキャッスルシーを盛り立てて、鳥海海運に負けない企業に成長させるのだと。呪いのように彼に言い聞かせて。

「相手は強敵だよ。マイルくん、どうするつもり?」
「どうするもこうするも。これから考える」
「ハゴロモなら一昨日の夜に出航したよ。次の目的地はニュージーランドだって」

 イッセーのはなしだけでは何もわからない。マツリカはほんとうにカナトと恋愛関係に至っているのか。ふたりが一緒に行動しているのに理由はあるのか。ハワイに寄港した際にインペリアルホテルに寄ったのはなぜなのか。
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