若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 そのままホテルに横付けされた車を降り、カナトは用意された部屋の鍵を手にエレベーターに乗り込む。エレベーターのなかでも啄むようなキスを繰り返されて、マツリカの心臓は激しく鼓動を刻んだままだ。
 最上階の部屋でふたりきりになることが叶ったカナトは早足で天蓋つきの寝台に向かう。まっさらなシーツのうえに降ろされたマツリカは、周囲に色鮮やかな花が散らされているのを見て、嬉しそうにはにかむ。

「これ、五色の花(クムクマン)……?」
「ああ。バリ島で見たときと同じ花を揃えることは難しかったけど、結婚初夜でつかわれるイランイランとハゴロモジャスミン、いい香りのする薔薇を手配させたんだ」
「ふふ。甘い匂い」
「なんせ貴女の名前と同じ、祭祀の花だからな」

 だけど俺はいい香りのするマツリカを味わいたいよ、と彼女を押し倒し、甘くて淫らな口づけを贈る。寝台のうえの花びらが祝福するように舞い上がり、ふたりの身体に降ってくる。
 口腔内に侵入する彼の舌を素直に受け入れて、マツリカはうっとりとした表情で彼の肩へ手を伸ばす。ハワイで飲んだトロピカルなワインの味が、ふたりを大胆にさせていた。
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