義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した【中編】
 和樹の卒業式には父母と私、家族全員で見に行った。
 大学受験は、私立のすべり止めはすでに合格もらっているし、ほかは合格発表を待っているだけなので。
「あー、和樹!」
 校門で出迎えた和樹の学生服のボタンが見事にない。
 えええーっ!
「モテモテじゃんっ!和樹すごい!さすが私の自慢の弟!」
 思わず顔がによによしてしまう。
 和樹の良さを分かってくれてるのが私以外にもいるっていうのが単純にうれしい。
「姉ちゃん……はい」
 へ?
 手を出すとボタンが一つころん。
「母さん、これ」
 母さんが手を出すと、母さんの手にもボタンが複数ころりん。
「えー、なんで、母さんのほうが多いの?」
「和樹、父さんにはないのか?」
 和樹が頭を押さえた。
「いや、ボタン持ってかれてもさ、まだ高校受験残ってるから、制服必要だろ?だからもう試験残ってないやつにボタンもらってきた。母さん縫い付けてもらえる?」
 母さんが和樹の頭をなでた。
「いいよ。もちろん。和樹は頭が回るね。母さん助かったわ。ボタンをくれた子にお礼しないといけないわね?」
 おお、そうだ。ボタンくださいってシステム……。まだ卒業式にも制服使うんだから困ったものだよね。
 でも、欲しい女子はたくさんいるし、断れない男子もたくさんいる。
 SNSで見たことあるよ。「息子の制服のボタンがない!」悲喜こもごもの書き込みを。あ、ボタンがあるっていう悲喜こもごもも見たなぁ……。
「いいよ。嬉しそうにボタンくれたよ。全部もらわれたって家族に自慢できるとか言ってたぞ」
 あああ、ご家族の皆さん……まさか、女子ではなくモテ男子にもらわれていったとは思わないでしょうね。
 いや、これが腐界の住人に知られたら、新たなる火種に……。げふげふう。
「えーっと、じゃぁ、私のこれは何かな?」
 母さんに渡された複数のボタンの謎は分かった。
 もらいすぎて余った?
 余ったボタンをもらっても、私も使い道がないのですが……。
「姉ちゃん、中学も高校も、誰のボタンももらえなかったんだろう?だから、やる」
 へ?
 いや、うん、確かに、私の人生、制服のボタンとは無縁の生活をしておりましたが……。
「も、もらえなかったんじゃなくて、もらおうと思ったことがなかっただけだよっ!」
 ぷんすか。
< 15 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop