義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した【中編】
「じゃぁ、これが、唯一の制服のボタンな。大事にしろよ。あ、何なら高校の卒業式の時もやろうか?」
 にやっと和樹が笑う。
「もちろん、和樹の大切な卒業式の思い出の品だから、大切にするけど、けど、」
 モテないことを弟に同情される姉ってどうなんだろう。
 情けない。
 これは、大学デビューして、彼氏を作って和樹を安心させてあげなくてはいけないのでは……。
 あぐぐ。ハードル高いな。

■10

『祝』
 ドラゴンが吐く火が祝の文字をかたどったスタンプが送られてきた。
 ゆきちゃんからだ。
『和樹くん卒業おめでとう!』
『ありがと!』
 ゆきちゃんとは同じ大学を受験した。二人とも合格してたらいいなぁー。
 ……ゆきちゃんはたぶん大丈夫だろうけど、私は判定ギリギリだったところだからなぁ。
『和樹、ボタン全部なくなってた』
 によによしたウサギのスタンプを送る。
『弟が人気者でうれしい』
 と送れば、ゆきちゃんから砂を吐くカメレオンスタンプが送られてくる。
『はいはい、相変わらずのブラコンおめでとう』
『大学行ったら、ブラコン卒業……は無理にしても、彼氏つくる!』
『ん?どうしたの、急に?』
 和樹からもらったボタンを写真に撮って、送る。
『姉ちゃんは中学高校で一度ももらえなかっただろうって、同情された』
『え?それ、和樹君の第二ボタン?』
 驚いて飛び上がっているカエルの画像付き。
『誰の第何ボタンかはわからない』
 分かっているのは、和樹の友達で私立高校への進学が決まりすでに受験が終わっている生徒の制服のボタンということだけだ。
『なんだ、それ』
 ゆきちゃんに事の次第を説明する。
『あー、モテすぎも大変だぁ』
『まぁ、私は和樹のボタンだと信じて、中学卒業式の思い出として大切にするけど』
『ブラコン!っていうか、弟に同情されないように彼氏を作ろうって思うところも、安定のブラコン!』
 扇子をもって踊っているカエル画像が送られてきた。
『ゆきちゃんも一緒に大学デビューしよう!』
『サークル活動に出会いを求める!爬虫類同好会に、ゆりっぺも一緒に入ろう!』
『安定の爬コン!だが、断る!我、異世界同好会に入る故。……まぁ、合格してればだけど』
『それな!』

 受験は無事に終わった。

< 16 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop