義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した【中編】
「さっきも言ったけど、異世界同好会の先輩。4年生だからほとんど顔を合わせないけど、珍しく来てたんだよ」
 和樹の視線が私の目をまっすぐとらえる。
「どういう人なの?」
 ん?興味を持った?
 一緒に静電気の可能性について話がしたいのかな?
「えーっと、優しくて、イケメンで、オタク」
 いい先輩だよと伝えるために言葉を探す。
 よく考えたら、ほとんど何も先輩のことは知らなかった。うーん。
「イケメンでオタク?」
 和樹の表情がこわばる。
 あれ?なんで?
 まさか、オタクがかっこいいわけないとか思ってないよね?
 あと、先輩について知っていることは……。
 ああ、そうだ。
「和樹と一緒でコーヒー好きみたい。和樹とは違って、砂糖なしのミルクのみだけど」
 私、何か失敗した?
 和樹が手元のコーヒーのカップを見て立ち上がった。
 そして、ベッドの上に片膝ついた。
 ドンッ
「え?」
 壁、ドン?
 蛍光灯の明かりが、和樹に隠されて影が落ちる。
「やっぱ……年上が……いいの……か……よっ」
 のどの奥でうなるように和樹が何かをつぶやいた。
 よく聞き取れない。
 ドンッっと再び壁を和樹が叩く。

■15

「どうせ、俺は子供だよっ!まだコーヒーに砂糖いれなきゃ飲めない子供だよっ!」
 あ……。
 そのまま体に重みを感じる。
 和樹の頭が私の肩の上に乗った。
 そうだ、高校生って、大人ぶりたい年ごろだ。
 カフェオレをコーヒーと呼ぶ和樹を私は傷つけるようなことを言った。
「ごめ……」
「……あやまるなよ……」
 耳元に響く和樹の声。
 どうしようもなく和樹のことがかわいくて、ぎゅっとして頭をなでたくなった。
 だけど、頭をなでてしまったら、また子ども扱いしたと余計に怒らせてしまいそうで動けなかった。
「姉ちゃん、俺のこと好き?」
 ん?
「もっ、もちろんだよ!和樹のこと大好きだよっ!」
 突然何?
 かわいいこと言い出した!
 やばい、小学校低学年までの「お姉ちゃんお姉ちゃん」って言ってた和樹を思い出した。
 なんか、迷子の子が私の手を握ったら「僕のお姉ちゃんだぞっ!」って迷子をにらみつけて私の手を取った和樹を思い出した。
 あ、それは幼稚園の時の話だっけ?
 やっばい。
 頭をなでるの我慢したけど、無理!
 わしゃわしゃわしゃっ!
「ちょっと、姉ちゃんっ!何すんだよっ!」
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