義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した【中編】
 ついに、和樹も大学生かぁ……。感慨深いなぁなんて思いながら布団に潜り込む。
 大学生になるのに、私の背丈もとうに超えたのに、それでもかわいいって思う私っておかしいだろうか。
 いつしか、カフェオレのようだったコーヒーも、コーヒーと呼べるものを飲むようになった和樹。
 私ではさっぱりわからないむつかしい本を読むようになった和樹。
 それでも、そのすべてがかわいくて愛しい。
 うん。姉バカです。
 はい。
 ゆきちゃんには相変わらずのブラコン言われてます。
 そうそう、ゆきちゃんには2年生の時に彼氏ができました。蛇のバジ君の飼い主の人です。二人で蛇をめでる日々はとても幸せだそうで……。
 私がブラコンなら、ゆきちゃんは爬コン。……。

■20

 布団の中でぬくぬく。ああ、明日の入学式が楽しみでなかなか寝付けない。
 もう12時過ぎたかな。
 あれ?
 突然、周りがぼんやりと明るくなった。
 まさか、もう朝?
 カーテンから漏れる光とも違うような気がするけど……。
「姉ちゃんっ!」
 ドアが激しく開き、和樹が部屋に飛び込んできた。
「どうしたの?」
 和樹も明日の入学式が楽しみで眠れないのだろうか?
 上半身を起こして和樹の顔を見る。
 下からほのかな光に照らされている。
 は?下から?
「魔素を感じる……」
 魔素?
 光の正体は蛍よりも小さな光の粒だった。無数の光の粒が床から次々と溢れてくる。
「まさか、この光が魔素?」
 もし、そうだとしたら、なんで?どうして突然魔素が?
 光の粒は次第にある形を作り出していく。
 ああ、魔法陣みたいだ。
「これは、召喚魔法の魔法陣か……」
 え?やっぱり、これ、魔法陣なの?
 召喚魔法って、異世界転生じゃなくて、異世界転移によくある、聖女やら勇者やらが異世界に召喚されるあれ?
 全く関係ない人が巻き込まれて召喚されたり、クラスが丸ごと召喚されたりする、あれ?
 いや、でも、ちょっと待って、その召喚魔法の魔法陣とやら……の、円の、中心に……私がいるんですけど!
「和樹……」
 困った顔で和樹を見る。
「姉ちゃんっ!」
 和樹の手が伸びる。
 私も手を伸ばして和樹の手をつかもうとするんだけど、和樹の手も私の手も、魔法陣の障壁に阻まれて手をつかむことはできなかった。
 見えない壁とか……これ、本当に魔法陣なの?
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