義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した【中編】
 転生ものじゃなくて、転移ものだと、日本で普通に暮らしていた……不幸じゃなかった主人公は帰りたいって望んで、帰る方法を探すために行動してる。
 だから、逆に、異世界から日本に転生したなんて言うなら……。
「日本に……この家から出ていきたい?」
 和樹も異世界を懐かしく思って、帰りたいと思っているかもしれない。
 ……ううん。
 私の心配は違う。
 和樹は、この家を出たくて……異世界転生したなんて言い出したんじゃないかって思ったんだ。
 半年前、あんなことがあったから。
 口を利かなくなってしまう前に……。

 半年前の回想。
 あの日、電車で30分離れた場所からおばあちゃんが来た。
 私が高校1年。和樹が中学1年だった11月の終わりだ。
「はい、これ、ちょっと早いけどクリスマスプレゼント。結梨ちゃんにはマフラー。結梨ちゃんももう高校生だからちょっとピンクは子供っぽかったかねぇ」
 ピンクといっても、ワントーン暗い落ち着いた色で、幼稚な感じはしない。
「ありがとうおばあちゃん。制服が暗い色だからピンクとか明るい色してる子たくさんいるんだよ。さっそく明日から学校にしてくね!」
 それからおばあちゃんがかばんからもう一つ包みを取り出した。
「和ちゃんにもマフラーにしようと思ったんだけど、中学校では使わないだろう?だから手袋にしたよ。緑が好きだったろ?」
 和ちゃんというのは、和樹のことだ。
 おばあちゃんはずっと和樹のことを和ちゃんと呼ぶ。
 和樹は、ソファに座ったままおばあちゃんに視線を向けることもせず、ずっと携帯ゲームをしていた。
「こら、和樹、おばあちゃんにお礼を言いなさい」
 台所からお茶を運んできた母さんが和樹の様子を見て叱った。
 和樹はつまらなそうにおばあちゃんの顔をちらりと見て「ありがとう」と小さな声で言ってから、すぐに視線をゲームに戻した。

■4

「和樹!あんたは!せっかくおばあちゃんがあんたのために買ってきてくれたのに……ゲームばっかりやってないのっ!」
 反抗期に突入した和樹はいつもこんなものだけれど、この時ばかりは母さんは和樹の態度を許しはしなかった。
「いい加減にしなさい!ゲームばっかりやって!ちゃんとおばあちゃんの顔を見てお礼を言いなさい!」
 母さんがゲーム機を取り上げた。
「うるせーな、くそばばぁ!ちゃんと礼言っただろ!返せよ!」
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