極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 シャワーをどうするべきかなんて考えてもいなかった。繭が答えに窮していると彼は続ける。

「面倒なら別にそのままでいい。俺は気にしないから」

 樹は繭の座るソファの前まで歩いてくると、ひょいと繭を担ぎあげた。お姫さまだっこではなく、父親が子どもを抱きあげるような感じで繭の身体は樹の肩のうえに乗った。
 樹は寝室まで繭を運ぶと、大きなクイーンサイズベッドに繭の身体をおろした。肩が触れるほどの距離に樹が座ると、かすかにベッドのきしむ音がした。

「あの、高坂先生」
「なに?」
「さっき、なんで助けてくれたんですか?」

 こんな状況で聞くことでもないだろうが、繭はそれが気になって仕方なかったのだ。高坂樹は他人に興味がない。それが定説だったし、繭の目から見ても彼は仕事以外で他人のために動くことはしない人間に思えた。
 軽く目を伏せた彼の、長い睫毛の美しさに繭は見とれる。樹の美貌は極上の芸術品のようで、いつまでも眺めていたいような気持ちになる。すっと彼の腕が伸びてきて、繭の髪をさらりと撫でた。

「あんたが泣きそうな顔してたから」

 意味ありげな彼の表情に、繭の胸はどきりと跳ねる。戸惑いと期待が入り交じって、うるさく騒ぎ出す。

(難攻不落の高坂先生が私を心配してくれたってこと? 本当に?)
< 50 / 124 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop