極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
「まぁな。たしかに、俺にとって人助けはあくまでも仕事で、無報酬でやろうなんて思ったことはなかったな」

 樹は自然な仕草で旬太の頭を撫で、苦笑する。繭は困ったような顔で続ける。

「私じゃ樹くんの顧問料はとても払えないですよ」

 ミリガン&ジェイの弁護士報酬はとんでもない額で、安月給の繭が払えるものではない。樹はふっと頬を緩ませると、手招きで繭を呼ぶ。隣に座れと言いたいらしい。繭は料理の手を止めて、旬太を抱く彼の隣に腰をおろした。
 繭の手の上に樹のひと回り大きな手のひらが重ねられる。優しいぬくもりに胸が震える。

「これは仕事じゃない。もっと言えば、繭と旬太のためでもないのかもしれない。ただ、俺がここにいたいんだ」

 理由を知るのは少し怖い気もしたが、聞かずにはいられなかった。

「――どうして?」
「繭と旬太のそばにいるとほっとする。高坂先生じゃなくて、ただの高坂樹に戻れるような気がするんだ」

 樹はふいに顔を横に向け、正面から繭を見つめた。ためらいがちに、言葉を選ぶように彼は言う。
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